7月の1枚
熊木 杏里
私は私をあとにして
NHKの新番組「ワンダー X ワンダー」のテーマ曲「君の名前」を歌っているのが彼女。1982年生まれのシンガーソングライター。彼女の書く詩は、自分自身の心の孤独や苦しみを描いたものが多い。高校時代、友人関係に悩み、自己表現できずにいて、私は何だろう?という自問から詩を書くようになった。このアルバムは4作目だが、つらく孤独だった日々に別れを告げ、それまでの自分にさよならをして、新たな旅立ちへの思いをこめたアルバムになっている。
このアルバムの中での極めつけは「一等星」。これはカウンセリングの本質そのものを歌っている。本当に自分の内面を見つめ、苦しみを乗り越えた人でないと、この詩は書けないと思う。それゆえ多くの人の心をゆさぶる曲となり得るのであるが….
「歯科臨床におけるNBMの実践」について、歯界展望に1年にわたって連載してきたが、私の読者に伝えたかったメッセージの全てがこの1曲に凝縮されていると思う。50歳にしてようやく気づいた人生の真実に20歳そこそこの彼女が到達している。自己の内面を見つめる力は年齢には関係ないということか。