化石のクリーニング
ひとくちに三葉虫やアンモナイトといっても数多くの種類があり、そのバリエーションの豊富さがコレクションする楽しみにもなっている。なかでも三葉虫は1mmくらいの大きさのものから70cmの大きさのものまで様々で、1万種にのぼると言われている。
その姿もきわめて多様で、中には多数の棘におおわれたものもおり、コレクターの間ではトゲトゲ三葉虫として珍重されている。私は実際にそのような生物が地球上に存在していたことに、限りない神秘さと興味を覚えるのだが、コレクターの間で取引されている化石の中にはフェイク、いわゆる偽物があることが多い。
このことを私はミネラルショーでお会いした三葉虫クラブの三船さんから教えられた。三船さん自身がご自身で化石をクリーニングするようになられたきっかけが、偽物か本物か見分けるのに一番確実な方法が自分でクリーニングすることに他ならないと思われたからだという。(三葉虫クラブのHPはこちら)
モロッコで産出する大きな三葉虫にDrotops
megalomanicusという種類がある(左上)。この三葉虫に棘がはえたタイプのものをDrotops Armatusといい、棘のはえている本数に2種類あることが知られている(左下と右)。この棘が本物なのか作り物なのかがいつも問題となる。時にはmegalomanicusに棘をつけてArmatusにしているのではないかという疑問さえ出てくる。そこで棘の真偽を確かめるべく、私はDrotops Armatusの原石を手に入れて自分でグリーニングすることにした。
手に入れたDrotops Armatusの原石。かなり太い棘が多数あるのがわかる。
クリーニングにはエアー・スクライバーという道具を使う。三葉虫クラブの三船さんから購入先を紹介していただいた。幸い歯科医という職業は、かなり化石クリーニング向きのようだ。コンプレッサーもマイクロスコープもサンドブラスターも全て上級品がそろっている。クリーニング開始して2週間くらいのときの様子。クリーニング時に折れた棘を破片の中から探し出し、瞬間接着剤でつける作業にほとんどの時間を費やした。
サンドブラスターを用いない方法でクリーニングしたため、棘の表面のテクスチャーは全く失われておらず、棘の太さもオリジナルのままである。棘の表面にも体表面と同じ模様があるのに注目。
クリーニング終了時の状態。中央に2列ある棘は全て2列あるわけではなく、1列しかない部分もあることが判明。自然の不思議さを感じる。