イエテボリ大学歯周病科訪問記
私がはじめてイエテボリ大学を訪れたのは、2000年6月のことであった。同大の歯周病科大学院を卒業された弘岡秀明先生(東京都開業)と鶴屋誠人先生 (茨城県開業)の3人で、スイスで8日から開かれる第3回ヨーロッパ歯周病学会(EuroPerio3)に出席するついでに訪問したものだった。僕にとっては、学会よりもイエテボリ大学訪問の方がメインだった。
80年代、イエテボリ大学の歯周病学講座Jan Lindhe(ヤン・リンデ)教授のもとから、歯周治療に関する画期的な論文が次々とだされた。東京で行われたLindhe教授の講演を興奮しながら聞いたものである。助教授のステューレ・ニーマン先生と行われたミニポアフィルターによる、歯周組織再生の試みの実験は、当時矯正専門医で矯正を学んでいた私に歯周治療に興味を持たせるきっかけとなった。
歯周治療の分野で世界をリードしてきたイエテボリ大学の歯周病科をいつかはこの目で見てみたいと思っていた。行くまでは、さぞかしアカデミックな臨床をやっているのだろうと思っていたのである。
驚いたことに、自分の想像とはまるで逆だった。というよりも、日本にいる時にはまったく気づけなかった大切なことに気がついたのである。日本にいるときは 最先端のトレンドにあこがれ、そのメッカで本物にふれてみたいと思っていた。ところが実際はそのような治療は非常にまれで、従来からの基本的な治療がきちんと基本通りに行われていた。あたりまえのことをきちんと行う。だからこそすばらしい結果が出るし、最先端の治療も生きてくるのである。それがスペシャリストなのである。自分は基本的なことをおろそかにしていて、最先端の流行ばかり追いかけていたことに気づかされた。
自分の臨床を見たとき、「基本的なことをきちんとやって結果を出す」、このことの難しさを痛感した。そして、それ以降このことが自分の臨床の目標となって、今日まで来たように思う。