メールで、先生のご専門は何ですか?という質問を受ける事がある。専門医というと日本では矯正歯科や小児歯科、歯科口腔外科が一般的だが、まだ歯周病専門医、インプラント専門医などはごくわずかである。学会レベルでは、歯周病、歯内療法、インプラントなどの専門医制度が出来つつある。
最近読んだ本に次のようなことが書かれていて、非常に感銘を受けた。
一つの分野で、世界の専門家並みの理解度に到達するには、平均して延べ1万時間、つまり毎日3時間ずつ、約10年間にわたって訓練を積む必要があるといわれている。ただ1万時間訓練を積むだけでなく、絶えず自分の行動と結果を観察し、何がまずかったのか、どうすれば良くなるのか、批判的に分析し続けることが必要である。
歯科医師国家試験に合格したら、歯科医師の資格は得られるが、そこからが専門家のスタートラインである。私は矯正歯科専門の診療所に5年間勤務したが、結局矯正の専門医にならなかった。あくまでも矯正は治療の一つの引き出しと考えていたからだ。自分の臨床でうまくいかないところ、疑問のあるところに焦点を絞り、その後も補綴、歯周治療、根管治療とテーマを決めて学び、一般臨床医としてのレベルを向上してきた。
ここへきて、ようやく自分でも満足できる臨床が出来るようになったと思っている。今年からは明海大学の歯周病科の非常勤講師となり、4年生の臨床実習を担当させていただいている。
久しぶりに基本に立ち返って、昔を思い出しながら、学生と一緒に基本を再確認している。自分が学んだ頃から1/4世紀以上がたっているが、基本的なことはほとんど変わっていない。