マイクロスコープによる原因歯の特定

マイクロスコープによる原因歯の特定

歯の痛みが長期にわたったり、痛みがひどくなると、どの歯が痛いのかわからなくなることがしばしばあります。私たち歯科医師はそのような患者さんが来院されたときに、それまでの経過を詳しくお聞きする問診、実際にお口の中を見る視診、原因と思われる歯をたたいてひびくかどうかを調べる打診、冷たい氷や熱いお湯などをかけて反応を見る温度診、レントゲン検査など、いろいろな検査をすることで、痛みの原因となっている歯を特定していきます。
それでもなお、原因となるような所見が認められず、どの歯が悪いのか特定できないことがあります。今回ご紹介するケースは、マイクロスコープによって原因が特定できた症例です。

<症例1>

経過:10日ほど前から、右上の奥歯がしみて痛む。自宅の近くの歯科医院で見てもらったが、虫歯ではなく知覚過敏だから様子を見るように言われた。しかし、しみるのがだんだんひどくなり、今では右側では咬めない。冷たいものだけでなく、熱いものもしみるようになってきた。



所見:
右上にはインレーが入っているが、虫歯の所見は視診、レントゲンともに認められない。打診、温度診ともに不明瞭。下顎にもインレーがはいっており、右下7のみはっきりと打診が認められ、インレー下にわずかに透過像が認められた。

診断:
右下7番遠心部歯質の破折から生じた歯髄炎

マイクロスコープにより破折線を発見、インレーを除去したところ空間があり、インレーが咬合力により食い込んで、破折を来したものと考えられる。

咬合力が強い人の場合、インレーの金属がくさびの役目を果たして、歯が割れることはしばしば臨床で経験される。
写真はReit先生たちの書かれた「Textbook of Endodontology」より引用。
<症例2>

経過:3ヶ月前より右上臼歯部に咬合痛があった。3日前より痛みが強くなり、右側ではものが咬めない。冷水や温水では痛みはでないが、食事をするといたくなる。

TH.jpgT.H.jpg
所見:右上にはインレーがはいっている。レントゲンや視診により特に虫歯は認められない。6番に強い打診痛がある。

診断:右上6番近心面歯質の破折から生じた歯髄炎

マイクロスコープ下で 右上6番インレーを除去したところ、歯髄へ及ぶ破折線を発見。インレーがかなり大きく、咬合により破折を来したものと考えられる。

T.H1.jpg矢印は破折線を示す。破折している歯質を保護するためにテンポラリークラウンんを作り根管治療を行っている。
生活歯におこる初期の破折は肉眼だけでは発見することが難しく、マイクロスコープで詳細に観察することで、発見できることがあります。歯の痛みとなるような明らかな原因が認められない場合には破折を疑い、マイクロスコープで観察することが有効だと思われます。

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