オーディオの話(その2)
今回は、我が家のオーディオのお話です。上の写真のスピーカーをご存じでしょうか?
あまりにも変わった形をしているので、こんなので音がちゃんとなるの?と思われる方もいらっしゃるかもしれません。1度見ると忘れられない形のスピーカーですが、私にとっては、そこから出てくる音も忘れられないスピーカーとなったのです。これは、イギリスの有名な音響機器メーカーであるB&W社のNautilus(ノーチラス)というスピーカーです。
Nautilusとは海に棲んでいるオウムガイという生き物の名前です。4億5000万年前~5億年前もまえから地球上にいるため、生きた化石といわれています。分類学的には頭足類というイカやタコに近い生き物で、オーストラリア近海の水深100-600mのところで生活しています。
オウムガイは表向きは普通の巻き貝に似ていますが、その内部構造は全く異なっています。その断面はいくつもの部屋に区切られていて、そこを連室細管と呼ばれるチューブが貫いています。
オウムガイは仕切られた部屋にガスを満たすことによって、浮力を得て海中を上下しています。微妙な浮力の調節はカメラル液という液体を軟体部から通じる連室細管を使って部屋の中に出し入れすることによって行われます。
スピーカーは電気信号を磁石の動きに変換させて、空気を振動させて音を出す機械ですが、その空気振動はスピーカーの前面と同時に後面にもでます。後ろに出た音が壁に反射して前に戻ってくると、時間的に音の位相がずれた音が混じってしまうため、音が悪くなります。B&W社はこの後ろに出た音を減衰させるべく、長いチューブをスピーカーの後ろに取り付けました。
しかしながら低音になるほど、そのチューブの長さを長くしなければなりません。この問題を解決すべく、B&W社はオウムガイの連室細管にヒントを得て、Nautilusスピーカーのウーファー部をオウムガイの殻の形に似た形状にしたのです。
こうして誕生したNautilusスピーカーの音は、聴く者にとって演奏している楽器や歌っている人間がホログラフィックに浮かび上がるほどのリアリティーをもって迫ってくる音を作り出すことに成功したのです。私がこの音を初めて聞いたとき、スピーカーの存在が消えて、中央部分の空中に人の口が浮かび上がり、その動きが見えるようでした。その口元から出てくる息づかいに背筋がぞくっとしたものです。
こうして我が家にNautilusが来ることになったわけですが、ひとつだけ問題がありました。このスピーカーはステレオアンプを4台も必要としたことです。狭い我が家にはそんなに物を置くことが出来ません。出来るだけ小さなアンプをということで、写真のようなお弁当箱のようなアンプを導入し聴いています。しかし、そこから発生する熱量はすさまじく、真冬でも暖房いらずです。